自分が一番痩せていなければダメ

18歳の高校生の「神経性無食欲症」
の患者さんが、身体管理のために
入院することになりました。


入院前の身体検査では、
身長160cm、体重28kg、BMI=10.9

1週間前から、さらに体重を落とそうと
全く食べないうえに、暇さえあれば
縄跳びを行い、このままでは
命に危険があるため入院となりました。

病棟にいらして、聴診などの
基本的な身体診察を行っている際に、
「先生の腕って太いですね」とか
言って嬉しそうに笑っていました。

その次に、採血をしようと担当看護師が
現れた途端、その患者さんは急に
不機嫌になりました。

その看護師の見るからにすらっとして
細身の身体に嫉妬心を覚えたらしい
のです。

もちろん採血は拒否。

「こんな病院に入院したくない。帰る!」
と騒ぎ出して荷物までまとめ出す始末。

その担当看護師の知らせを受けて、私が
病室に駆けつけたときには、今にも
病室を飛び出す勢いでした。

落ち着かせてよくよく話を聞いてみると、
「この世の中に自分より痩せている人の
存在が許せない」というのです。

実際の体重云々よりも、見た目で自分が
一番痩せていなければ生きている価値が
ないと考えているのです。

つまり、患者さんの言い分によれば、
あの担当看護師は私より絶対に痩せている
と思う、許せない、というのです。

先ほどの聴診で心雑音を聴取し、しかも
心拍数45/分という徐脈、心電図では
低カリウム血症による不整脈も出ている
のに退院させるわけにはいきません。

当初この患者さんは、ご自分で入院する
任意入院だったのですが、やむを得ず
強制的な医療保護入院に変え、
点滴管理の毎日となりました。